不安や恐れとの向き合い方|消そうとするより「使う」という考え方

思考録

不安がなくなったら、どれだけ楽だろう。

そう思ったことは、一度や二度じゃありません。先のことが見えない不安、うまくいかないかもしれないという恐れ、何かが崩れそうな感覚——そういったものが頭の中をぐるぐると回り続ける夜が、誰にでもあると思います。

でも、長年経営をしながら気づいたことがあります。

不安は、消すものじゃない。向き合い方を変えるものだ、ということです。


不安を感じる人ほど、真剣に生きている

まず、一つ伝えたいことがあります。

不安を感じるのは、弱いからじゃありません。

何も考えていない人は、不安を感じない。先のことを真剣に考えているから、リスクが見える。大切なものがあるから、失うことが怖くなる。本気でやろうとしているから、うまくいかないかもしれないと感じる。

不安の大きさは、真剣さの大きさに比例しています。

だから「不安を感じている自分はダメだ」と思う必要はまったくない。むしろ、それだけのものを抱えて前を向こうとしている自分を、少し認めてあげてほしいんです。


不安を「消そう」とすると、逆効果になる

不安に対して多くの人がやりがちなのが、「考えないようにする」「気にしないようにする」という対処法です。

でもこれ、実はあまり効果がない。

「ピンクの象を思い浮かべないでください」と言われると、逆に思い浮かべてしまう。それと同じで、「不安を感じないようにしよう」と意識すればするほど、不安が頭の中で大きくなっていく。

抑えようとするエネルギーが、逆に不安を育ててしまうんです。


不安と戦わず、「そこにあるもの」として扱う

では、どうすればいいか。

私が意識するようにしたのは、不安を「敵」として戦うのをやめることです。

不安が来たとき「また来た」と認める。「今自分はこれを不安に思っているんだな」と、少し距離を置いて観察する。戦わない、逃げない、ただ「ある」と認める。

これだけで、不安の圧力がすっと下がる瞬間があります。

感情は、認められると落ち着く性質があります。無視されたり押さえ込まれたりすると、逆に暴れる。不安も同じで、「あるよね」と受け取るだけで、少し静かになっていくことが多い。


不安を「情報」として使う

もう一つ、視点を変えてみてほしいことがあります。

不安は、実は有益な情報を持っています。

「この先どうなるかわからない」という不安は、「準備が必要なサインだ」と読み替えられる。「失敗したらどうしよう」という恐れは、「それだけ大切なことに取り組んでいる証拠だ」と捉えられる。「自分には無理かもしれない」という気持ちは、「成長の限界に近づいているサインだ」と見ることができる。

不安を「邪魔なもの」として消そうとするのではなく、「何かを教えてくれているもの」として読む

この視点が持てるようになると、不安との関係が少し変わります。恐れを感じながらも、その恐れが指し示す方向に進んでいける。


私が実際にやっていること

不安が強くなったとき、私がまずやるのは「書き出す」ことです。

頭の中にあるものを、紙でもスマホのメモでもいいので全部吐き出す。整理しようとしなくていい。ただ外に出すだけ。それだけで、頭の中がほんの少し静かになる瞬間があります。書いてみると「思ったより大したことじゃなかった」と気づくこともあるし、「これは本当に向き合わないといけない問題だ」と明確になることもある。いずれにしても、頭の外に出すことで、不安が「扱えるもの」に変わっていく感覚があります。

もう一つ意識しているのは、「最悪どうなるか」を一度だけ真剣に考えることです。

漠然とした不安は、輪郭がないから怖い。でも「最悪このケースになったとして、自分はどう動けるか」を考えると、不安が具体的な問題に変わる。具体的になると、対処できる気がしてくる。ほとんどの場合、最悪のケースは「思ったほど致命的じゃない」ことに気づきます。

そして一番大切だと思っているのが、不安がなくなるのを待たずに動くことです。

完全に不安が消えてから動こうとすると、永遠に動けない。不安は行動の前には消えてくれない。動きながら、少しずつ薄くなっていくものです。「怖いけど、やってみる」——この順番に慣れていくことが、不安と付き合っていく上での一番の練習だと思っています。


不安は、なくならない。でも、慣れていける。

正直に言います。

経営を続けていても、不安がなくなることはありません。規模が大きくなれば、それだけ大きな不安が来る。人生のステージが変わるたびに、新しい恐れが出てくる。

でも、不安との付き合い方が変わると、同じ不安でも重さが違います。

「また来たか」と思えるようになる。「これは自分が真剣にやっている証拠だな」と受け取れるようになる。そうなると、不安があっても前に進めるようになっていく。

不安を消すことが目標じゃない。不安と一緒に生きていけるようになることが、本当の意味での強さだと思っています。

今、何かに不安を感じているなら。それはあなたが、それだけのことに向き合っているということです。


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