カテゴリー:空想|対象:現状に悩む30代,40代
ある朝、目が覚めた瞬間にふと思った。
「私は、いつまでこれを続けるんだろう」
布団の中でスマホを開く。通知が並んでいる。メッセージ、スケジュール、確認事項。まだ7時にもなっていないのに、もう仕事が始まっている感覚。妻が隣で寝ている。子供たちの声がそのうち聞こえてくる。それでも頭の中はすでに「今日やるべきこと」でいっぱいだ。
休日も仕事のことが頭から離れない。有給を取るたびに罪悪感がある。「頑張っているのに、なぜか報われている気がしない」。そんな感覚を抱えたまま、また月曜日がやってくる。
あなたにも、こんな瞬間はないだろうか。
「老後2000万円問題」より怖いもの
数年前、老後に2000万円必要だというニュースが話題になった。あのとき多くの人が不安になった。でも私が思うのは、金額の問題じゃないということだ。
本当に怖いのは、**「何のために働いているのか、わからなくなること」**だと思っている。
30代になると、働くことへの疑問が変わってくる。20代の頃は「もっと稼ぎたい」「もっと上に行きたい」というシンプルな欲求で動けた。でも30代は違う。住宅ローン、子供の教育費、親の介護がちらつき始め、会社では中堅として後輩の面倒も見なければならない。自分のことだけ考えていればよかった時代は、もう終わっている。
やらなければいけないことが増えるほど、「本当にやりたいことは何だったっけ」という問いが静かに積み重なっていく。転職を考えても踏み切れない。副業に興味はあるけど時間がない。NISAを始めたはいいが、根本的な不安は消えない。
私自身も、ある時期にそれを強く感じた。毎日動いている。結果も出ている。なのにどこか空っぽな感じ。満たされていないのに、何が足りないのかもよくわからない。あの感覚は今でも覚えている。
「働く」の定義を疑ってみる
少し空想の話をしたい。
もし明日から「お金のために働かなくていい」としたら、あなたは何をするだろうか。
旅行?家族との時間?趣味?それとも……「やっぱり何かしら仕事をする」と思うだろうか。
面白いことに、この問いに対して多くの人が「しばらく休んだあと、何か仕事をすると思う」と答える。人間は本質的に、何かに貢献したいという欲求を持っているらしい。お金のためではなく、誰かの役に立っているという実感のために。
つまり「働くこと自体」が問題なのではない。「なぜ働くのか」がぼやけていることが、しんどさの正体なのかもしれない。
「上司に言われたから」「生活のために仕方なく」「なんとなくここまで来てしまった」——そういう言葉が口をついて出るようになったとき、人は静かに消耗していく。
定年という「ゴール」の嘘
日本社会は長い間、65歳定年を人生のゴールのように扱ってきた。それまで頑張れば、あとは自由だよ、と。
でも少し考えてみてほしい。65歳まで働いて、残りの人生は何年ある?体は動くか?やりたいことをやるエネルギーは残っているか?
30代から定年まで、あと30年以上ある。その間にAIが仕事を変え、会社が変わり、社会のルールが変わる。「この会社に定年までいれば安泰」という感覚は、もはや多くの人が信じられなくなっている。終身雇用の崩壊、リストラ、早期退職優遇制度——ニュースで見るたびに「他人事ではない」と感じている人は多いはずだ。
私が経営をしながら気づいたのは、**「ゴールを遠くに設定しすぎると、今が全部手段になってしまう」**ということだ。今日の仕事も、今日の家族との時間も、全部「将来のため」になる。そうなると、今を生きていない。
子供の成長を「忙しくて見逃した」と気づくのが、10年後では遅すぎる。
「いつまで働くか」より「どう働くか」
空想の話に戻ろう。
理想の働き方を描いてみてほしい。場所は?時間は?誰と?何のために?
私自身の答えは、「家族の近くにいながら、誰かの役に立てる仕事を続けること」だ。規模よりも、自分が関わっている実感。お金は大切だが、それが全てじゃない。子供たちが大きくなったとき、親の背中を見て何かを感じてくれるような、そういう働き方がしたい。
これは綺麗事に聞こえるかもしれない。でも、こういう「自分なりの答え」を持っているかどうかが、30代の働き方を大きく変えると思っている。
ゴールが「定年」じゃなく「自分が納得できる状態」に変わると、今日の選択が変わる。転職するかどうかも、副業を始めるかどうかも、投資をするかどうかも、全部「自分のゴール」に向かっての行動になる。同じ残業でも、「やらされている残業」と「自分が選んだ残業」では、消耗の深さがまるで違う。
30代は「問い直しのタイミング」
私が思うに、30代は人生で一番大事な「問い直しのタイミング」だ。
体力も経験もある。でも、20代の頃ほど無敵感はない。「石の上にも三年」で我慢してきた会社が、本当に自分に合っているのか疑い始める。結婚・子育て・マイホームと、人生の大きなイベントをこなしながら、「これが幸せなはずなのに、なぜ疲れているんだろう」と感じる。そのモヤモヤの正体は、他人の描いた「正解」の上を歩いているからかもしれない。
「いつまで働くのか」という問いに、正解はない。70歳まで働く人もいれば、45歳でセミリタイアする人もいる。大切なのは、誰かが決めたゴールで走るのをやめて、自分のゴールを自分で設定することだと思う。
それだけで、今日の仕事の見え方が少し変わるかもしれない。
布団の中でスマホを眺めていた朝のことを、また思い出す。
あのとき私は、通知をいったん閉じた。そして窓の外を見た。まだ薄暗い空が、少しずつ明るくなっていた。
働くことをやめたいわけじゃない。ただ、自分が選んで働いている感覚を、ずっと持っていたい。それが大切だと気づいた。
あなたはどうだろうか。
yuu.|日常思考録

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